オルケスタ・リブレ at クラブ月世界(Hyogo)

この日はクラブ月世界にオルケスタ・リブレを観に行きました。クラブ月世界に来たのは約5年ぶり

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オープニング・アクトは三田村管打団?。この日はペ・ド・グのメンバーでもある松田徹がテナー・サックスで参加(新メンバーということになるんでしょうか。このバンドにとってはその辺りの定義はよく分かりませんが)。久々の参加の飯野弥生、亀井奈穂子とソプラノ・アルト・テナーが揃い踏み。意外にも彼らにとっては珍しい編成でした。

ステージの前、フロアの前方スペースにドラムセットを組み、それを囲むようにしての演奏でしたが、センターのサックス三人の左にトロンボーン、右にトランペットという並びがそれぞれのチームを分断しているように聞こえ、音にやや纏まりの弱さを感じました(僕が最前列で観ていて近距離過ぎたからかも知れませんが)。パフォーマンス自体は、「旅行」での風船笛を使った間奏や「キネンジロー」の“チーチキ”に合わせてのジャンプなど、遊びと実演が緩やかに結びついていて、とても管打団らしくて良かったです。

短めのセットチェンジを終え、オルケスタ・リブレの登場。芳垣安洋によるスタンダードナンバーを演奏する楽団、ということを知るのみで、音源含めこの日が初体験。しかし、結果的には何の予習も無いまま聴いたことが吉と出ました。

前半はデューク・エリントンを取り上げ、後半ではクルト・ワイルを取り上げる二部構成。バンドメンバーだけでの演奏は前半の1曲目「I Got It Bad」のみで、その後は全てゲストメンバーを迎えての演奏。

その1曲目「I Got It Bad」から、メンバー全員のスキルの高さに思わず唸ります。塩谷博之のソプラノにうっとりしていたら、バックでリズムセクションがシャープに過激なフィルインを挟み込んできます。鉄壁のアンサンブルが、安定感を保ちながらも鮮烈な音で次々と聴衆を魅了していくところが、単なるエリントンを演奏するジャズバントとの格の違いを感じさせてくれます。

2曲目でスガダイローが登場。もしかすると過去に渋さ知らズのメンバーとして観たことがあったかも知れませんが、氏の演奏を自覚して観るのは初めて。フリーと定型の間を行き来しながら激しくドライブしていく演奏は、さすが山下洋輔に教えを受けただけのことはある、という感じですが、年齢や世代の違いによるものか、より鋭角的でよりスピート感もあり、初速から間もなくトップギアに入るようなパワフルさも非常に魅力的。安定したリブレの演奏をバックに疾走する様は、そのコントラストの絶妙さも含め、見事な相乗効果を生み出していました。

続いてはタップダンサーのRONxIIが登場。タップダンスを生で観るのは初めてでしたが、タップが大変スリリングなリズム楽器であるということを思い知らされる壮絶なパフォーマンスでした。複雑かつバリエーション豊かなリズムが高速で生み出される様は、たった二本の足で生み出されているとは思えないほど。上半身を含めた全身で魅せる、最小限でありながら最大級のエンタテインメントに、フロア全体が圧倒されました。

そして、その痛快なタップに導かれて、「Take the “A” Train」へ。有名なテーマを軽快に奏でる管の響きは、この日数少ないノスタルジックな瞬間のひとつ。続いての「Caravan」も数多のアーティストに演奏されてきた残り香を含みながら耳を傾けていましたが、ひとつひとつの音の強さ、スガダイローの突っ走るピアノ、RONxIIの聴き手に挑みかかるようなタップは、この楽団の奏でるサウンドを特別なものにしていました。

短い途中休憩を挟み、後半はクルト・ワイル編。柳原陽一郎をボーカルに迎え、まずは「Alabama Song」で幕を開けます。この曲を僕はSoul Flower Unionで知ったのですが、クルト・ワイルの作曲だとは知りませんでした。柳原氏は日本語詞をつけ、身振り手振りを加えながら朗々と歌い上げます。

その歌が実に素晴らしく、こんなに歌唱力のある人だとはスキマアワーの時には気づきませんでした。強者揃いの楽団をバックに、舞台役者になりきって劇中の人物を演じる姿は実に見事。アイデア、センス、そして技術が高度に融合されるとここまですごい表現が出来るのか、と、その後の「三文オペラ」でも一曲終わるごとに感嘆のため息が漏れるほどでした。

その三文オペラを、「モリタート」、「ジゴロのバラード」、と(時に男女二役を演じ分けながら)見事に演じ、「人間はどうやって生きてきたのか?」で圧巻の朗読を披露し、感無量の拍手に包まれながら、極上の歌劇は幕を閉じました。

その後、アンコールでは「Goodbye Pork Pie Hat」を、ゲスト総出演で渋くプレイ。たまらない格好良さにうっとりとし、その余韻をたっぷりと引きずりながら会場を後にしました。

月世界の音響も申し分無く、演奏も演目も抜群。改めて、演奏が上手いということはとても重要だと思いました。その上手い人が沢山集まって、その人たち全員が、上手いだけじゃない、魅せる演奏をすると、こんなにも極上のエンタテインメントが生み出せるんだという目の前の現実に身も心も奪われ、0時前に自宅に着いても、しばらく放心状態でした。

これだよ。こういうライブが観たいんだよ。

うたのかたち~UTA NO KA・TA・TI
うたのかたち~UTA NO KA・TA・TI オルケスタ・リブレと柳原陽一郎とおおはた雄一

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