core of bells at epok (Osaka)

この日はepokcore of bellsを観に行きました。
epokでライブを観るのは初めてで、core of bellsも初見。

会場内は、犯罪ボーイズによる展示中。ジャンクでアナーキーで不穏な空気満載の空間に仕上がっておりました。

その部屋の真ん中あたりにテーブルと椅子があり、その横にギターとアンプが置かれ、部屋の奥にモニタースピーカーが二本立っている以外はライブが行われる気配もなく、どこから何が始まるのかもわからないまま、なんとなく所在無い雰囲気に包まれて開演を待ちます。

開演時間になったな……と思っていると、メンバーの一人が照明の暗転もない中、おもむろにアンプ前の椅子に座り、黙々とiPhoneで宴会の予約を入れ続けます。演奏を始める気配は全く無し。

そんな中、後方を覆うブルーシート、左手にかかる白い布、正面に垂れる暗幕の向こうから、得体の知れない音や呻き声が時折発作的に聞こえてきます。途中、「椅子、足りてますか」とお客さんに訊くと、左手から椅子が飛び出してきます。

全く状況が把握できず、無闇に不安を煽られる状況が恐らく2~30分ほど続く中、後方ブルーシートの奥から牛乳をかけたシリアルを持ってきて少し食べたかと思うと、おもむろにギターを手に取ります。そして不意に演奏がスタート。ボーカルは正面暗幕の向こうから、ギターは中央で宴会の予約をいれていたメンバー(しかも椅子に座りながら)と左手白い布の向こうから、ドラムスとベースは後方ブルーシートの向こうから。

高速ブラストビートが一糸乱れず疾走するハードコア・サウンドは、目の前で座って弾いているギタリスト以外のメンバーは全く見えず、ほんのわずかに布がはためくのみ。そんな、メンバーそれぞれの姿が見えない状況でも演奏できてしまうことにまず驚嘆しましたが、音に囲まれるようにしてこの手の音楽を聴く新鮮さと、音響的にも以外に違和感がなく、タイトかつ鮮明に響くepokのサウンドにも驚きました。展示物が多いことと全メンバーが空間的にセパレートされていることが功を奏したのかもしれません。

数曲演奏すると静かになり、また宴会の予約を入れ始めます。

幕の向こうに隠れているメンバーは、幕の向こうから時々出てきますが、その際は黒い袋(引っ越しや機材搬送に使うようなもの)に隠れて移動し、座椅子を放り出したりマーブルチョコをこぼしたりと、やはり意味不明。しかし取っ手の部分を触覚のように震わせながらもぞもぞと動くその姿はその姿はまるで異形の生き物で、マーブルチョコはこの生き物の分泌物と思えば合点がいきます。

これまたおもむろに、後方から炊飯器を持ってきて、蓋を開けてご飯が美味しく炊き上がっていることを確認している時、突然幕の向こうから話し出したかと思うと、その場でリハーサルを始めてしまいます。お互いに譜面の確認をし、打ち込みで作ったデモテープを聴き、打ち合わせをしつつ音を合わせていきます。

お客さんも関係なく、リハスタにいるような調子で力の抜けた練習を続けていましたが、これまた突然終了。炊飯器からご飯をよそい、美味しい匂いを漂わせながら、一口、二口食べます。

正面暗幕の中に入り、出てきたと思うと片手に緑色のスライムを乗せていてテーブルに落とすなど、奇行を繰り返しながらも(これも異形の者の排泄物ということでしょう)黙々と宴会の予約を入れ続け、演奏は最後まで不意に始まり不意に終わり、最後はメンバーの一人が袋に入ったままエレベーターに乗ったので、もしやこの方式で一人づつメンバーが消えていくのかな……と思いきや、そのまま会場に戻ってきました。

そうこうしているうちに終演の時間が近づきます。すると不意に会場内の全ての照明が消え、視界が真っ暗に。何が起こるのか、期待と不安に胸を高鳴らせていると……そのまま何も起こらず灯りが戻ります。

そして……何事もなくライブは終了。

異形の空間の中で異形の生物に囲まれながらひたすら宴会の予約をし続ける男性。その男の異形の者との日常にある音楽的邂逅の一風景を切り取ったかのような世界観。

日用品の多用で超自然的風景を生み出すのは小箱での芝居の常套句ですが、物語性の喪失と取り憑かれたように無意味な行為に執着する主人公のそれはまさにその風情。

明確な物語らしきものはありませんでしたが、その断片が集合することで全体像として物語が浮かび上がってくるような印象派的演出が、観客の想像力をかき立ててくれます。

そして徹底したオフビートな演出と相反するように奏でられる音楽は攻撃的なブラストビート。「静と動」とはあらゆるジャンルにおいて使い古された表現ですが、演奏から発する熱を視覚的に極限まで押し殺し、曲が終わっても拍手が起こらない雰囲気を作り上げたその手腕は、「ロックミュージック」を中心に据えた表現において「極北」とも言えるような、眩暈すら覚える壮絶なコントラストを生み出していました。

この日はワンマンで、しかも犯罪ボーイズの展示中というかなり特別な環境でのライブだったので、長尺、そしてこの場所ならではの演出になっていたのであろうと思います。対バンでのライブ、他の場所でのライブがいかなるものなのかが非常に気になります。いずれまたどこかで観てみたいですね。

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