ホライズン山下宅配便があなたの町へと出向きます!神戸編 at 旧グッゲンハイム邸 (Hyogo)

この日は旧グッゲンハイム邸で行われたmapHOP KENの共催イベント「ホライズン山下宅配便があなたの町へと出向きます!神戸編」に行って来ました。

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オープニングはかえるさん山路知恵子のデュオによる、その名も「かえる山」。自由奔放に歌を紡ぐかえるさんと、確定された演奏と即興の境目が融和した山路氏のドラムスとの組み合わせは、見事に絡み合った……と言うより、絶妙なアンバランスさを生み出していた、というような感じ。時代とジャンルを超越した異形のポップスと、偶発音も取り込んだリズム。それぞれが微妙に違う周波数で鳴り、しかもお互いが捻じれているような音の重なりが、まるでポリリズムのような多層的なサウンドを生み出していました。

ラストには、「踊れる曲を用意しました」と、なんとデヴィッド・ボウイの「Let’s Dance」を披露。「Let’s Dance!」とシャウトする山路氏と、朗々とした声で歌い、コール&レスポンスまでするかえるさんの意外性に驚愕と爆笑。

続いては名古屋のトリオバンド・紙コップス。空き缶や犬小屋で組んだドラムセット(犬小屋がバスドラ)に、小学生コスプレで頭に紙コップ……という人を食ったようなビジュアルに、インパクト優先の浅いバンドではないかと油断していたらさにあらず。3人それぞれの演奏力、歌唱力、自己主張が申し分無くハイレベルで、しかも3人が絶妙なコンビネーションでガッチリ組み合い、トリオバンドかくあるべしと言いたくなる相互作用を生み出し、調和しながら高め合うその結束力が、素晴らしいです。そして高め合った成果として、楽曲を途中で脱線・寄り道させ、そこに笑いや遊びを容赦無く盛り込んでいくという、そのユーモアセンスとメンタリティがまた素晴らしく、観ていてこんなワクワク感を覚えたのは三日月スープを始めて観て以来、腹がよじれて呼吸が止まるほど笑ったのはラーメンズのライブ以来かというほど。

そしてラストはホライズン山下宅配便。60年代イギリスのロックバンドのようなオーセンティックなバンドの演奏に上ずり気味でやや滑舌の悪いボーカルが乗る、というサウンドをベースに、時に寸劇風にもなる笑い中心のMCが間断なく埋め尽くすスタイルは、どうも比重が笑いに寄り過ぎている気がして、前半なかなか入り込めないところがありましたが、後半に進み、お客さんを巻き込む体制に入るにつれ、徐々にただならぬ空気が首をもたげ始めます。

客席の空いている座布団を集め、それを重ねた上に正座し、「一度こんな姿勢で歌ってみたかっただけ」とボーカルの黒岡氏。さらに座布団を積み上げるために、「皆さんずっと座ってて疲れたでしょう。ちょっと立ってみてください……あ、ここにも座布団が余ってる」とお客さんの座布団まで取り上げます。

ギターのチューニングを変え、カポをつけようとして「あれ、カポがねえ」とギターの伴瀬氏。そこで急に人力カポをさせるという暴挙に出、紙コップスのかくむ氏とお客さんのご夫人がバレーコードのようにして伴瀬氏の弾いている間ギターのフレットを押さえることに。かくむ氏がカポを持っているにも関わらず。そして終了後には「カポの気持ちが分かったか」と諭す黒岡氏。

そして最後の曲「期待」ではビデオにもあるダンスをお客さんも一緒に……というよくあるパターンから、なぜか踊ってたお客さん全員でサークルモッシュしたかと思うと、黒岡氏を中心に全員その場に倒れ、最後は何故かメンバーと一緒に後方のお客さんにお辞儀しているという超展開。気づけば僕は黒岡氏のすぐ左隣に立ってました。

楽曲は、ここ数年の流れとも思える「ルーツをごった煮にして今日的エッセンスでまとめあげる」というタイプで、クオリティも高いが、ねじれ具合とひねくれ度合いも容赦がなく、この辺りは実に現代的だと感じますが、逆にライブでの演出は、一見人を食ったような現代的な偏屈さを見せながらも、その実、小芝居風の語り口は旧来的で、お客さんの巻き込み方も基本フォーマットは古くからあるものをそのまま使っていながら、アウトプットとしては今日的な屈折を発生させて、前を見ていたつもりが終わったら後ろを向いていた、という現象を生み出しています。

演奏や楽曲に留まらず、MCやお客さんとの絡みまでも古典と現代性を融合させているバンド(しかもここまで上手く)は、実はそうそうないように思います。

そういう意味でも、音楽とライブでのパフォーマンスが切っても切れない関係にあるこのバンド、さて音源だけ聴くとどうなのか。この日はアルバム先行発売もされてたんですが手持ちがなかったので、また改めて購入し、じっくり聴いてみたいと思います。

セットリストを黒岡氏のブログより以下に転載。

ロートホルン
Ku-Mon式脱退のテーマ
はぼわに
ハコビヤ
外国人さんとあった(隣人と私たちは手を組んだ)
あかいあかい
学校給食
大工の歌~今日からお前の家だ~
厚着のモンプチ

EN:
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