IKITSUGI / SHOS / HOP KEN 合同企画 at 旧グッゲンハイム邸 (Hyogo)

この日も前日に引き続き、旧グッゲンハイム邸で行われた「IKITSUGI / SHOS / HOP KEN 合同企画」に行ってきました。

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この日は14時より開場/開演。

屋内ではネス湖+黒田誠二郎の演奏中でした。ドローンから歌もの、そして最後は轟音ノイズへ。

終了して庭に出ると、事務所の建屋の各部屋から顔を出す三田村管打団?の面々。そのまま演奏を始め、徐々に庭へと出て来ます。この辺りの遊び心が正に管打団といった感じです。目の付けどころといい身軽さといい決まり事の無さといい、ここまで風通しの良いバンドが他にあるんでしょうか。子持ちメンバーのお子さんもだんだん大きくなってきて、演奏する横(というか足下)にはその子どもたちの姿が。特にこの日は前日と比べて子連れ率も多かったです。

ここでは少し短めに終了し、残りは後半の両想いへと持ち越すことに。

続いてのett+パーパは、お互いの曲を一緒に演奏していましたが、特にettの曲が素晴らしく、即興ではないソングライティングのパワーを痛感。パーパの演奏も見事にフィットしていました。

半野田拓はソロでしたが、前日の睡眠不足も堪えて、ほぼ休憩時間に。しかしこの人、歳取りませんね……。

NRQは、SAKEROCKがトロンボーンではなく二胡を加えていたら……という妄想をしてしまいたくなるような無国籍のインスト・ポップ。曲も素晴らしいし、演奏もタイト。そしてやはり、吉田悠樹の二胡が格別です。最後にmmmが歌で参加しての曲も、言わずもがなのハイクオリティ。

ju sei +江崎將史は、シュールな歌詞を徐々にリズムをズラしながら歌ったかと思うと、プロジェクターで江崎氏の撮り溜めた立ち食いそばの写真を延々流しながらエレベーターガール風のナレーションを挟みつつ、写真一点ごとに単音ひとつずつ鳴らしたりと、かなり人を食ったようなパフォーマンス。ユーモアとシリアスがない交ぜで、その境界線を振り子のように横断している感じが面白かったです。

微音生+鈴木裕之&キャッチパルスは、音楽的にはいまいちピンと来ませんでしたが、イラストによるVJはなかなかの見応え。もちろん鈴木氏のあのテイストですから、笑いの要素もたっぷり。広義のVJにはもう発展性も面白さも残っていないと思いますが、こういう作家性を全面に出したフリードローイングはまだまだ追求する余地があるように思えます。

真夜中ミュージックは、小田島等によるアルバムジャケット作成も同時進行してスクリーンに表示。こちらも音楽よりもライブペインティングに目を奪われてしまいました。ラストには小田島氏が和訳したという「Walk on the Wild Side」を演奏。これは楽しかったです。

この後室内は大規模なセットチェンジ。その間、屋外ではTAIYO33OSAKAの池田社長と稲田誠によるトークが行われました。音楽を通して政治的・社会的なことにコミットすることの有無などについて。「そんなこと言ってられない」という言葉は心強く感じますが、やはりそれは「事が起こってから」だったんですよね……。

前日の屋外での上映もそうですが、原発に絡んだコーナーを夜の寒空に出してしまい、終わった頃に室内に戻ると人でいっぱいで前の方が見えない……という構成には致し方ない部分があるとは言え、これではさすがによっぽど聞きたいと思わなければ聞いてくれないわけで、もうちょっとなんとかしてもらいたかったです。

片想いは、後半で三田村管打団?と共に両想い管打団!として演奏。とにかくすごい、と本人含め周囲から噂を聞いていたコラボレーションですが、蓋を開けてみれば意外にも演奏自体には(STEEL BEATでのラップは元々そういうラップがあるかのような見事なハマり具合でしたが)化学反応を起こしているマジックのようなものはありませんでした。ただ、メンバー編成のゴツさ、メンバー自身のテンションの高さ、お客さんのレスポンスがそれぞれ単体の演奏時よりも遥かに高く、演目や演奏のグレードに関わらずとにかく熱く熱く盛り上がりました。多分この圧倒するような熱量の放出というのは、渋さ知らズに感じるビッグバンドの音圧の迫力に近いものなんでしょうね。それでいて爆音で吹き飛ばすような破壊力よりもどこかユルい脱臼感が漂っているのは、やはり両バンドの相性の良さを物語っていると言えそうです。

普段の管打団のライブでは味わえないノリノリの空間はひたすら楽しかったですが、こういう形で消費されないからこそ管打団は管打団たり得ているんだろうな、という事も改めて感じたりもしました。お祭りはお祭り。管打団単体がこうなっても仕方が無いですからね。

そして、二日間最後の演奏はテニスコーツ。女性コーラス8人とトランペット2人を加えてのステージは、前日のyumboが「鎮魂歌」だったことと対照的に、「賛美歌」のような静謐で美しいサウンド。ポップスの彼岸で言葉遊びにメロディを見出すその歌には、一年前のステージとは違う、のびのびとしたムードを感じました。そしてそれは翻って自分自身の「傷」が癒えてきていることでもあることに気づき、心地良い音に包まれながらも愕然としました。所詮、被災地からは遠い身。一年で癒えてしまう程度の浅い傷しか負っていなかった自分は、手負いのような気持ちで一体何をしてきたんだろうか……。

終演後、部屋の隅に置かれていた署名に名前と住所を書き、帰路へ。

久々のフェスらしい長丁場のイベントに参加したので結構疲れましたが、素晴らしい名演が沢山あり、二日間ほとんど休みなくびっしり関わった文章氏のスピード感のあるキリッとした音響も素晴らしい、とても濃密でエネルギッシュなイベントでした。この二日間を、この場所とこのイベントで過ごせて良かったです。

ただ、原発問題に対して(それがイベントの趣旨ではないとは言え)未だ曖昧な対峙をしているな、と感じる部分もあり、チャリティーソング的なメッセージソングよりも両想い管打団!の演奏の方がポジティブなエネルギーと希望に溢れてるじゃないか、と強く感じただけにそれが少し残念だったところ。

原発が駄目だ、というのであれば、使い捨ての食器も駄目なんだと思うんです。首尾一貫してるというのは、そういうことなんですよ、多分。
何故昔のp-hourがやっていたようなリターナブルの仕組みが出来なかったのか。理由は分かりませんが、そこに言い訳が通用するなら、原発を容認する言い訳も通用するということなんだと思います。

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6 comments on “IKITSUGI / SHOS / HOP KEN 合同企画 at 旧グッゲンハイム邸 (Hyogo)

  1. nisikawa bunsho

    石黒君。こんにちわ。ブログ読ませていただきました。
    楽しく読ませていただきました。
    原発の事に言及されていたのが象徴的な印象やったのですが、
    僕も音楽に関わるエンジニアとして思うところがあるのです。
    うーん。僕の思うところを言いますね。
    去年のちょうど一年前のグッゲンハイムでチャリティーイベント
    をテニスコーツ主催で行なった時に。
    そのときにエンジニアで関わっているのですが、
    電気を使うかどうか(いわゆるPAシステムを使うか、どうか)
    でさやさん、オオルタイチ、ウタモともめました。
    僕としては、電気を使わない方がイベントとして象徴的なのでは?
    と思ったわけです。
    ですが、そんな事は結局本末転倒であったと思っています。
    現代を生きるなら、電力は無視できません。
    電気を使わないと表現できない音楽家はいます。
    その恩恵を原発の両天秤にかけるのはどうかな?
    と思います。原発は原発の問題であって、電力の問題ではないと
    思っています。これからどうするか?考えていきたい。
    自分のできる事として、今実験的にあるスペースの音響を
    全てソーラー発電でまかなえないか?というプランを考えています。
    それが現実的かどうか?それで音楽が中断したり、クオリティが下がる
    ならそれは意味のないことで。原発がなしでも、我々小さな力
    のレベルでも、そこから始めないと何も変わらないと思います。
    原発をなくすために、村のレベルから始めることしか僕らにはできません。
    なので、石黒君のご指摘どおり、いろいろ問題があったかもしれません。
    いち音楽家として出来ることをできる限りやったイベントだと思っています。今回のikitugiは。

    Reply
  2. 石黒亮

    文章さん、コメントありがとうございます。
    僕も今回のイベントは本当に素晴らしかったと思っています。
    それを前提に、僕が感じたことについて書かせていただきました。
    電気については、僕も文章さんと同感です。
    特に僕がイベントをやっているピュアオーディオなんてのは、電力をふんだんに使うとても非効率なシステムで、電力をケチることがクオリティ低下に直結する場合もあります。
    そこにすごく疑問や問題も感じている部分はもちろんあります。例えばカーボンオフセットを行うなどの方法は取れるかな、と考えたりもしていますが、結論は出ていません。
    葛藤の中、悩みの中で多分皆さん音楽やイベントをやられているんだと思います。稲田さんは当日のトークイベントでその葛藤を話されていましたし、杉本くんとはイベント前にそんな話をさせてもらいました。だからこそ、僕自身の感じたことは自分のブログに吐けるだけ吐き出して、この記事を目に留められた方が何かを考えるきっかけになれば良いのではないか、というのが僕の本意でした。
    この二日間については、ただ単に「とても良かったです」という言葉で纏めてしまうよりは、そこから何か考えを深めていくために問題提起をした方が良いのではないか、そして、僕の思ったようなことについては誰も書かないだろうなと思ったこともあり、僭越ながら色々と書かせていただきました。
    本当に無責任に思いのまま書いてしまったので、イベントを否定しているように感じられたり、イベントに全力で関わられた方々に不快感を与えてしまうことがあるとしたら、大変申し訳ないです。繰り返しになりますが、イベントは本当に素晴らしく、僕にとってこの二日間は、とても貴重な体験になりました。

    Reply
  3. モリモト アリ

    ちょっと便乗しよう。リターナブルはもっともな話やねん。でも実際あの人数に直面すると飲み物は難しかったみたい。p-hourのリターナブルはそういえばリターナブルの器自体がレンタルやったやね。あれはたぶん客数百人の数倍用意しないといけななかったのでは。どんどん回してる印象ではなかったもんね。ゴミが結構な量になって丁度ちょっと考え直さないといけないなと思ったところでした。とは言え。楽しかったですね!

    Reply
  4. nisikawa bunsho

    いえいえ。僕もそう思っています。
    否定的には捉えていません。
    発言することそれの重要性というか、
    話し合うことって実はなかなかできなくて。。。。
    石黒君とはそういうつ込んだはなしをしたいと思って
    書き込みしました。多分尽きることのない話なので、
    また会った時に話したいです。
    実は電話しようかな。。。とも思ったの
    ですが。

    Reply
  5. 石黒亮

    アリさん、コメントありがとうございます。
    p-hourは確か外部団体のサポートか何かでリターナブルにしてましたよね。僕もあのイベントでリターナブルだとかゴミ削減だとかまで気を回すのは難しかっただろうなと思いつつ、でもこのイベントに限らず、どのイベントでもそうなんですよね。それこそTAIYO33とかでも。ゴミの問題と原発の問題って繋がってないように思ってるかもしれないけど、エネルギー使うんだから全部繋がってるんだよ、ということをやっぱり誰かが発信していかないと駄目なんじゃないかな、と思って僭越ながら書かせていただきました。
    いやでも本当に楽しかったです。両想いでめちゃめちゃテンション上がってるアリさんがすごく面白かったです(笑)。

    Reply
  6. 石黒亮

    文章さん、是非今度ゆっくりお話しさせてください。
    杉本くんもこの文章さんとのやり取りを読んで、「こういう話を文章さんから聞いたことも無かったので、知ることが出来て良かった」と言ってくれていました。
    全然関係ないですが、文章さんと僕は同い年ってご存知でしたか(笑)。

    Reply

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