二階堂和美 at Shangri-La (Osaka)

この日はシャングリラ二階堂和美を観に行きました。

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開場は20分押し、開演も15分ほど押してのスタート。チケットは当日券も出ていましたが会場内はエントランス手前までお客さんでいっぱい。5年前のワンマンではもっと余裕があったと思うので、この間に彼女の認知度がどれだけ上がったのか、それに至るどれだけの積み重ねがあったのかを伺わせる情景でしたが、彼女もステージに出てフロアを見た途端にその人の多さに感激し、開演前から既に涙ぐんでいました。

そのせいもあって、1曲目「Blue Moon」で早くも右目のマスカラがややにじみ始め、新作「にじみ」のアルバムジャケットにある花のアップリケを付けたピンクのワンピースも併せて、ビジュアルも含めた「にじみ」の世界への見事な導入に(単なるこじつけです)。

1曲目から胸の奥からこみ上げてくる感動に目頭を熱くしていると、2曲目では早くもエキセントリックな側面が全開。山村誠一、ガンジー西垣、曽我大穂、黒瀬みどり、まるむしという今回のツアーのレギュラーメンバーに、ドラムスにMAX土居を加えたツアー最大のバンド編成……となれば、ただでさえバンドがいるとテンションの上がるニカさん、「歌謡ショーみたーいっ」と叫び、「あなたと歩くの」をお客さんを巻き込みながら大熱唱。

時折広島弁が顔を覗かせる彼女らしいマイペースなメンバー紹介(途中、昔まるむしと共演した際の録音をCD-Rで販売したが、まるむしに完成したCD-R以外一銭も払わなかったエピソードを語ったり、バンドに囲まれた自分を「歌手みたい」と言ってメンバーからツッコまれたりしながら)を挟み、「説経節」、「ネコとアタシの門出のブルース」と、アルバムの流れを思わせる楽しい歌謡曲モードから、シリアスな「蝉にたくして」へ。口で蝉の声を再現するその表現力に、昔「七色の声」というようなベタな表現で喧伝されていたことを思い出しましたが、今やそんなつまらない常套句で彼女を評する人はいないでしょうね。

「岬」、「萌芽恋唄」と曲間も短めに神妙な空気を作り上げた感動的な流れの中、二の腕に付いたマスカラを見てようやく自分に起きていることに気づいた彼女は、慌ててタオルで拭くと、曲終わりで「ちょっと直して来てもいいかしら」とバックステージへ退却。仕方ないなぁ……という感じで、バンドメンバーはゆったりとしたジャムセッションで間を繋ぎます。こんなことが飄々と出来てしまうバンドの雰囲気もとても良い感じ。

ステージ戻って来たニカさんはメイクを直しに行ったのに服も着替えて登場。これもまた予定調和でないところが彼女らしく、その後も「とつとつアイラヴユー」演奏終了後に「歌の入りも歌詞も間違えたし、もう一回やってもいいかしら」と、丸々一曲最初から歌い直すという自由奔放ぶり。しかしこの天才シンガーの前では、全ては聴き手への幸福な音楽体験へと返ってくるように出来ているらしく、二度目のパフォーマンスはソロも歌のスイング感も倍増した素晴らしい演奏に。

ドラムスがドカドカと鳴り響く「PUSH DOWN」では声の細さがバンドに埋もれて、彼女のウィーク・ポイントが見えた気がしましたが、その後の涙、涙の「めざめの歌」の、シャングリラがフェスティバルホールに化けたかのような壮絶な歌のエネルギーに、目頭が熱くなる感動の嵐。「お別れの時」で感動はクライマックスを迎え、本編は終了。

バンドメンバーはその後もステージに残り、メイク直しの時と同じようにジャムセッションがスタート。Tシャツに着替えたニカさんが黒瀬みどりの赤ちゃんをSMASHのスタッフに抱っこさせて連れ立っての再々登場。アバンギルドでは、全編抱きながら鍵盤を弾いていたらしいです(もちろんちゃんとヘッドホンしてました)。

山村誠一がチンドン太鼓を抱えての「いつのまにやら現在でした」で大盛り上がり、ニカさん自身が「気持ち悪い」と言ってしまっているあの独特の踊り(MCで言ってましたが、小さい頃の8mmの映像を見たら、今と同じ踊り方をしていたらしいです)を存分に披露するダンスタイムも挟みながら、最初のアンコールも大歓声の中終了。

最後のアンコールでは、「歌はいらない」の歌詞と津波を自分で繋げてしまって悩んだこと、福島の人たちから「海を恨んではいない」という言葉を聞いたことなど、涙ながらに自分の中の葛藤を、時間をかけて少しずつ言葉にして、同曲を歌いました。

歌い終わった時の晴れやかな表情がすごく素敵でした。

ラストに「始めからもう一回やろう」と言って「女はつらいよ」を再演。ほぼ客席に歌わせ、途中からフロアに降りて練り歩き、会場中が大盛り上がり。

ボーナス・トラック的に、新譜の初回特典で配っていた「ハッとして!GOOD!」のカバーでこの日の演目は全て終了。アルバムからの曲のみの演奏でしたが、時計を見ると2時間強が過ぎていました。

笑いと涙が、相反するのではなく、同居して感情の発露として一度に吹き出てくるような壮絶なエネルギー。あくまでもしなやかに、優しく、しかし限りなく強く発せられる彼女の魅力は、表情も動きも歌と一体化して、聴衆をどこまでも深く引き込み、我々聴き手はこれ以上入られないという限界にぶち当たり、その限界にやきもきする……これが、「歌に恋する」ということでしょうか。

<セットリスト(記憶違いの可能性大)>
Blue Moon
あなたと歩くの
説経節
ネコとアタシの門出のブルース
蝉にたくして

萌芽恋唄
女はつらいよ
とつとつアイラヴユー
とつとつアイラヴユー(Reprise)
PUSH DOWN
めざめの歌
お別れの時
〜アンコール〜
いつのまにやら現在でした
〜アンコール2〜
歌はいらない
女はつらいよ(Reprise)
ハッとして!GOOD!

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