HOP KEN presents 『ホープ軒』 at 旧グッゲンハイム邸 (Hyogo)

この日は旧グッゲンハイム邸で行われたホープ軒に行ってきました。

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天気も良く、ここ数日と比べてもポカポカとした陽気で、過去最高の“旧グ日和”。

室内は椅子が数十脚並べられていましたが、ステージ前方は座布団。立って観てもよし、椅子に座って観てもよし、座布団でくつろいで観てもよし。これは快適です。

オープニングはオシリペンペンズ。新曲を交えながらも、相変わらずの「固定された短い楽曲を毎回違うように演奏する」という奇跡的なバランスでの白熱するインタープレイ。

歌の調子を変える、リズムの裏に入る、BPMにムラがある……そんなこんなの全ての要素をメンバー全員が完全に血肉化しているからこそ可能な壮絶パフォーマンスは、ポップスのフォーマットでジャズに近い即興演奏を行いながらも、疑いようのない完全なポップス。それは、多くのバンドが長いキャリアの中で一瞬だけ訪れる伝説的なピークタイムを、同じメンバーで何年も維持し続けているようなものではないかと思います。そういう意味でも、奇跡的なバンドです。

この日は、城みちる風フォーマルファッションに身を包んだ中林キララがピアノに挑戦。さらにこれまでとは違う新しいサウンドが生み出されていました。即興が若干ぎこちなく感じたものの、この路線も磨き上げればすごい演奏になりそうな予感も。

ここで生ビールを一杯。美味しかったですが、立って飲んでいると、ジョッキが重くて指がひん曲がりそうでした。

続いてのbikemondoバンドは、ソロもバンドも初見でしたが、音が素直にふわっと届いてくる感じが、人を食ったようなところのあるBRAZILよりも遥かに好きな感じでした。物販でCD買いました。

バックバンドも素晴らしく、特に半野田拓の、音響的で即興風なのに、楽曲から一切踏み外さない安定したギタープレイは白眉。

ベースの稲田誠が続いてウッドベースを弾いていたは、まるで昭和のシャンソンかムード歌謡(または「完全に誤解した“ブルース”」)のような浪々とした歌に、クラシックギターの哀愁がほろほろと重なるサウンドが懐かしくも新鮮で、昼下がりの旧グの雰囲気にはまりまくっていました。

次の倉林哲也は、この日最も衝撃的だったと言えるアクト。空を見据えて、訥々と喋るMCから、歌い始めると抜けの良いふくよかな歌声が響いて、驚きながらも引き込まれ、そうかと思えば共演バンドのメンバーにその場で譜面を渡して奇天烈な歌を合唱させたりと、この短い時間では解読不能の変化球。でも、サウンドは素晴らしく、ひねりやすかしも嫌味が無く、何だかわからないけどとにかく楽しい。この人はすごいですね。また観たいです。

少し陽が陰り始めた頃に始まった浜谷俊輔は、クールな出で立ち、少しビターな響きを持つ、静かで強い声、歌から伝わるエモーションなど、味と深みのある上質さを感じさせてくれました。全然似てるわけではないですが、最近聴いていた若かりし日のニール・ヤングの弾き語り演奏を、少し思い出しました。

そろそろ夕刻なので、山路製めんのうどんをいただこう……と思ったら既に完売。仕方が無いのでお酒でも飲もう、と赤ワインを注文したら、久々にビール以外のお酒を飲んだせいもあって、飲み始めると一気にベロベロに。まあ、すぐ引きましたけど。

陽も落ちて後半戦。静かな歌ものが続いたところから一転、エレクトリックなバンドセットが続きます。

ceroは、ダンサブルなサウンドでありながら、単なるリズム重視のダンスミュージックでもなく、歌が中心にありながらも、ポップス的な軽い消化の仕方をしていない思慮深さがあり、それでいてパッと聴き明快で楽しい、という、色んな層を折り重ねて、しっかり独自の音を生み出しているところに、なんだかしばらく音楽をピンポイントで聴いているうちに、次の次元に突入していたんだな……という隔世の感すらありました。

片想いもそんな感じで、管楽器やギター、ベース、ボーカルにピアニカや三味線が混ざっているところからして、奇をてらったようなバンドなのかと思っていたら、そんな側面は全く無く、フォーク風味の歌も、賑やかな編成/演奏も、僕の想像の範疇を超えて、チャーミングで楽しい演奏に昇華されていました。

いわゆる「関西ゼロ世代」と言われたバンドにおいての「根無し草」的なオリジナリティとは違う、そして、あらゆる要素を多重して持ちながらも、「それぞれのレイヤーの境界線はアナログ的に滲ませ、オリジナルに見せかける」という小手先の個性ともまた違う、何か別の発露で、今までに無かった形で結実したような、新しく、若い手触りが感じられるパフォーマンスでした。

cero終了後には、フードコーナーに塩屋のカレー屋さん・ワンダカレーが登場。早速いただきましたが、ちょっと辛さが物足りなかったものの、甘めのルーの中に具材がドロドロに溶け込んでいて美味しかったです。

同様に、おやつ時の頃には、地元のコロッケ屋さんからコロッケと鶏肉のチューリップが届いたりと、フードがご近所からのお裾分け感覚で更新されていくところが、旧グ……というか、“お家”クオリティ。これは他のハコではちょっとあり得ない感じで、この辺りの盛り上げ方が、やはり管理人・森本アリの天才的な遊び心やホスピタリティが遺憾なく発揮されているところでしょう。

最後は、先月のベアーズでも素晴らしい演奏を繰り広げていたDODDODO+稲田誠。演目は恐らく同じで、演奏も(若干DODDODOの歌に荒さを感じましたが)特に違いはなかったんですが、CDを聴いた後に改めて観ると印象も少し変わるもので、稲田の張りのある声がDODDODOの絞り出すような声と非常に相性よく響いているとか、聴き慣れるごとにDODDODOの歌の深みが感じられるようになってきたりとか、前回よりも胸にグッと来るものがありました。

終演後、一旦点いた客電を消したかと思うと、バースデーケーキが登場。この日が稲田誠・39歳の誕生日だったそうです。いやまあ、それはおめでとうってことなんですが、見た目で遥か年上だと思ってた人が、実は4つしか違わなかったということがショックで、ああ、自分も世間から見たら、ずいぶんな歳なんだろうなぁ……と、そんなことを思いながら塩屋の地を後にしました。

「ポストFBI」的な側面の強かった最初のHOP KENと違い、遺伝子を引き継ぎながらもより独自色を強く出していて、規模を小さくしながらも内容が濃く、かと言って重くもならず、ゆったりとくつろぎながら楽しい音楽を堪能できる、絶妙な空間が生まれていました。

僕は幕間にDJが選曲して大きな音を鳴らすというイベントの形式があまり好きではないので、小さい音量で(でも良く聴いてみると面白い曲がかかっている、ということも重要なんですが)ご飯を食べたりゆっくり喋ったりできる幕間の時間も良かったですね。とても楽しい一日を過ごさせてもらいました。

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