この日はGOBLINにSidewalk Salon Orchestraを観に行きました。
瀬戸信行、山田裕、登敬三の3人によるバンドで、演奏スタイルとしてはロイヤルハンチングスに近いですが、メンバーが一人多いこともあって、よりソロや掛け合いに自由度があるようでした。
フレイレフほどの大編成だとコンポージングに重点が置かれますが、小編成ならではの足取りの軽さも兼ね備えていて、改めてトリオバンドの無限の可能性を感じさせてくれます。
また、3人揃ってよく喋り、瀬戸のMC中も茶々が入りっぱなし。そんなお気楽な雰囲気と演奏が違和感なく融合されていて、とぼけた顔でカラッと壮絶なブロウをぶちかます抜けの良さがまたバンドの魅力を増幅させます。
白眉は、後半のステージで登の曲を演奏中のこと。
曲間で突如演奏がブレイクし、3人が楽器を構えたままピタリとしばらく動きを止めて沈黙するんですが、その瞬間、入り口ドアが「カランカランッ」と鈴の音を立てて開き、お客さんが入ってきました。
これぞカフェライブの醍醐味というか、普通のライブハウスだとほぼあり得ないし、カフェだとしても、小さなカフェで演奏しているすぐ横が入り口のドアでなければ生まれない、来店者にお客さんが自然に目を向けざるを得ない構図。
演奏が止まると同時に音を立てたドア、クラリネットをくわえたまま黙する瀬戸の左横にインサートされる、遠慮がちに顔をのぞかせる女性の顔。
そのあとは演奏者もお客さんも楽しさに拍車がかかり、当然のごとく更なる盛り上がりを見せました。
これぞ、完璧な瞬間。GOBLINというお店が音楽の神を召還したのか、お店に宿る小さな妖精がいたずらを仕掛けたのか。
この瞬間こそが、音楽全てである、と言いたくなるぐらい素晴らしい体験でした。それは、こうやって文字にしても分からない、現場で共有していないと分からない、そして、誰もが共感することではないということも全て含めた上で「完璧」だったのです。
Time In Blue | |
Vino;登敬三(Ts);柴内貴彦(Gt);菊田茂伸(Wb)
Vianote 2010-06-01 |