alva noto + ryuichi sakamoto at 渋谷 C.C.Lemon ホール (Tokyo)

今日は渋谷 C.C.Lemon ホール(元・渋公ね)に、alva noto + ryuichi sakamotoを観に行ってきました。

傑作アルバム「Insen」の名を冠したこのツアー、ついに日本公演、ということで喜び勇んで(違和感が拭いきれないレモンの看板を見上げながら)会場へ。以前のアンティークな作りからがらりと雰囲気の変わったロビーもフロアも、(看板の派手さとは違って)落ち着きがあって、この手の音楽を聴くにもちょうど良いという感じ。

演奏が始まってその感覚は更に強まりましたが、特に「ホール鳴り」が綺麗、という印象。決して大きな音ではないのに、しっかりと聴こえてくるし、不快な反響なども殆ど気になりませんでした。

演奏は、アルバムで聴く事の出来る、「有機性と無機性が“静謐”を生み出していく」まさにあの世界を再現していましたが、カールステン・ニコライがサイン・ウェーブやグリッチ音で時を刻み、音数を極限まで削ぎ落とし、倍音の減衰をクローズアップさせていた坂本龍一のピアノ、という構造は、生で聴く事でより立体的に感じる事が出来ました。

それは、中央スクリーンに映し出された映像が二人の演奏と完全に同期して音像を視覚的に描いていた事によるものでもありましたが、サイン・ウェーブが鳴った瞬間に「ブンッ」とホール中が音で包まれる感覚、その中を、ゆっくり、静かに、確実に音を刻み込んでいくピアノのアタックが、少しずつ減衰し、曲の最後で、音が消えてしまう最後の瞬間まで聴き入ってしまう、というのは、部屋で録音されたものを独りで聴いているのとは全く違う、強烈な緊張感がありました。

ステージ上の二人の演奏も、観ていて手に汗握ってしまうほどにスリリングで、研ぎ澄まされた音によって行われるインタープレイに、普段はだらしない姿勢の僕も、思わず背筋を伸ばして聴き入っていたほど(伝わんないかなぁ……)。去年のソロツアーでは、なかなか饒舌だった教授もMC無しで、やはり独特の集中力が必要なんだろうな、ということも感じさせられました。

そんな事もあってか、本編は約1時間で終了。アンコール(「Revep」にも収録されている「戦メリ」を切り刻んでグリッチ音とサンプリングで再構築された「ax Mr. L.」もプレイ。生で聴いたら悶絶するほど格好良いです)を含めても1時間半といったところでしたが、(客席もステージ上も)緊張感を持続させるには、このくらいが妥当だろうな、という感じ。これで2時間もプレイしたら、聴いてる方が卒倒してしまいそうです。

そんな心地良い緊張感に包まれ、しばらく興奮状態から冷めないまま帰路へ。帰りの新幹線車内で公演パンフレットを見ていたら、これまたとんでもなく美しく見事な緊張感を帯びていて、結局京都に着くまで一睡も出来ませんでした。

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1 comment on “alva noto + ryuichi sakamoto at 渋谷 C.C.Lemon ホール (Tokyo)

  1. マサヨシマサシ

    ぼくも28日のライブに行ってきました。すばらしかったー。CDで聴くのとは全然違いますねー。特に自宅では貧弱にしか再生できないニコライさんが出してる低音部分と、坂本さんのピアノのより深まって聞こえる自然なリバーブ感。ほんとに悶絶モノでしたね。
    一緒に行った同居人は、1曲目から睡魔に引き込まれていたようでしたが(苦笑)。ちなみにその同居人、終演後には「眠っちゃっても損したって感じしないライブなんて、なんかすんごく得したライブって感じだわよね」などと、微妙に意味不明な感想を述べてました。

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